Nishika AI News Letter - Issue #80
年末にかけてChatGPT o1 Pro, Gemini 2.0, Soraと続々と新技術の発表がありますが、それ以上に印象に残ったのが、AnthropicやPerplexityなどが語るAI業界の現況が、とても実感に合うものでした。
AIの進化に産業界がついて来れていない。今のAIでたくさんのことができる
AI技術のスイッチングコストは低い。いかに優れた体験を提供するかが重要
優れたAI技術が本当に安価に公平に手に入るようになってきた中で、AI技術を組み込んだ体験を提供できた者が覇権を握る。一方で産業界に十分にAIが浸透できているわけではない、つまり体験をデザインできているところはまだまだ少ないという現状がある、というのは日本の現況も表していると思います。
o1 Proすごいですよ、Geminiすごいですよ、だけでは産業界にAI活用は浸透しない。
実務では、社内で何年もその業務をやってきた人と同等の知識を前提とした、より個別化した判断を行っていて、それをAIがやってくれることが期待されている。
個別化した判断をするにはRAGが必要ですね、ファインチューニングが必要ですね、という議論も悪くないが、そもそも生成AIが実用できるのは対話のユースケースだけではないよね、が実は議論すらされていなかったりする。
「データがないから難しいですね」が一世代前のAIではAI導入の(文字通り)殺し文句になったりしていたが、今は生成AIを使って合成データが作れるから、データがないというのは言い訳にならないことが意外と認知されていない。
産業界にAIが浸透しない理由は上記の通り色々ありますが、浸透しない理由を整理して終わる評論家ではなく、だからこう浸透させました、のプレイヤーとして日々活動していきます。
さて、本AI News Letterも次回が本年最終稿となると思われます。徐々に仕事納めに入っていく時期ですが、AI界隈はまだまだupdateが続くと思われます。
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Application
その性能とともに、月額200ドル(約3万円)という、一応toC向けSaaSとしては驚きの高価格が話題を呼んだChatGPT o1 Proが発表。
思考が深い、回答がAIっぽくなくてまるで人間と話しているようなど色々な評価がありますが、肝心のビジネスユースでの有用性については我々も評価中。
経営者の壁打ち役として元々生成AIは有用ですが(「間違ってはいけない」類の使い方ではないから)、そこでのパフォーマンスは目を見張るものがあるようです。
ちなみに落合陽一さんの一連のXのポストを見ると、使い手によっては一般人が引き出せる以上の価値を引き出せるのかも?と思ったりもします。
最大20秒の長さの動画を、テキストや画像・動画入力から生成できる動画生成AI。tiktokなどではおそらくSoraで生成したと思われる動画を繋ぎ合わせた動画が大量に投稿されている。
20秒ということで、ビジネスユースとしてはまだ本格投入には早いか。ちょっとした商品PR動画の生成はクラウドソーシングで10万円くらいでできてしまう中で、まだAIの方が高くつく印象。
グーグル「Gemini 2.0」公開 「エージェント時代のAIモデル」
ChatGPT o1 Proに続いて、GoogleがGemini 2.0を発表。Geminiは元々画像や音声のマルチモーダル対応が特徴ですが、調査アシスタントとして機能しレポート作成が可能なDeep Research機能も注目で、この用途に限ってはo1 Proよりも有用との声も(例)。
冷水を浴びせると、何でもできるわけではないことは理解しつつも、意外とシンプルな用途でもできないことはある。音声認識を試してみると、フィラーが多かったり実際の発言とタイムスタンプが大きくずれるなど、そのままでは使えない結果。しかし、出力された結果のチェックなど有用な用途は確実にありそう。
三菱UFJ銀行が生成AI活用への投資計画を中期計画にまとめる。まずはAI営業(営業支援など)を視野に入れるとのこと。
そもそも営業はAIの向いている業務領域(「間違いのないものを作る」というAIの苦手領域から外れているから)で筋は良いと思うのと、当該銀行くらい投資規模がないと業務で有用な生成AIを作るのは大変なことから、期待したい。
Technology
Meet Willow, our state-of-the-art quantum chip
Googleが新しい量子コンピュータチップWillowを発表。現在最速のスーパーコンピュータで10の25乗年かかる処理を5分以内で完了させることが可能とのこと。
実用途として、理論上は8000チップあればビットコインが利用する暗号化技術を解けてしまう可能性を示しているが、長年の課題である量子エラー訂正の問題が改善しているものの解決できたわけではなく、実際に脅威となるにはまだ遠いと言われている。
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AnthropicやPerplexityといった気鋭のAI企業が語るAI業界の現況。
AIの進化に産業界がついて来れていない。今のAIでたくさんのことができる
AI技術のスイッチングコストは低い。いかに優れた体験を提供するかが重要
AnthropicやPerplexityにとって優れた(AI)技術は当たり前だからこう言っている側面もあると思うが、 「優れた体験の提供」をとにかく突き詰めるのが大事というのは全く同意。でないとAIの威力も知っていただけないので。