Nishika AI News Letter - Issue #4
Summary
東京オリンピックが開催真っ只中ですね。5年間の頑張りが報われる選手もいれば、1つのミスで掲げてきた目標が潰える選手もいます。比較するのは全くのナンセンスですが、機械学習は大量にデータを集めて0/1でない判断をする世界である一方、オリンピックを目標とするアスリートが戦っているのは数年に1度しか試行ができず、それによって得られた結果が全てという世界。非常に過酷な世界で戦われているアスリートの皆さんには、本当に敬意しかありません。
さて、今回のオリンピックは、競泳で各選手の速度が表示されたり、サッカー選手が「デジタルブラ」という心拍数や走行距離、走行スピードや身体の傾きを測定するウェアラブルセンサーを装着していたり、AIやデータサイエンスがスポーツにおいても当たり前に使用されていることが一般に周知された大会でもあると思います。オメガの人やボールの軌道を計測する技術は、高度な技術に注目するとともに、同社が昨今話題の「AIのバイアス」を検証する良い機会だとも捉えている点に注目したいところです。
上記オメガの取り組みもそうですが、大量の学習データを準備することはAI開発の1つの壁になります。ただ、バーチャル空間を作ることができればリアル空間では難しい多数の試行ができる場合もあります。バーチャル空間上で汎用的な人工知能を訓練するDeepMindの取り組みは興味深いです。
機械学習が当たり前に使われるようになったことで、それらを規制する動きも活発になってきました。不正なデータ取得は個人情報保護の観点から既に厳しく見られていますが、不正に取得されたデータを使って訓練したモデルも規制の対象とする動きも出てきました。皆が当たり前に使っているモデルが実は不正なデータで訓練されたものと判明し、慌てて一斉にモデルの移行に走る、なんてことも近い将来発生しそうです(不正なデータとは異なりますが、機械学習で非常によく利用される巨大な画像データセットImageNetで差別的な画像が含まれていることが数年前指摘され話題になりましたね)。(M)
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Application
東京オリンピックでは、さらに高精度なタイム計測をAIが支えている
オメガがポジショニングシステムとモーションセンサーシステムの中でAIを活用しているというニュース。ビーチバレーのスマッシュやブロック、スパイクなど無数にあるショットの種類や、パスの種類、ボールの飛行経路をAIに認識させている。膨大なデータセットを準備することが大きな課題の1つであり、人種や性別を問わず均一に動作するかどうかは本オリンピックの中で確認したいとのこと。
Fired by Bot at Amazon: ‘It’s You Against the Machine’
「ボットに解雇される」というセンセーショナルなタイトルのニュース。Uber Eatsの配達版とも言えるAmazon Flexで働いている配達員が、配達が完了できなかったのは正当な理由があるのに、データに則って機械的に判断するシステムによって不当に解雇という判断を下されたというのもの。
Flexの配達員の働きは厳しくデータで管理されており、約束の時間に配達所に到着したか?決められた時間内にルートを完了したか?などチェックされており、人間の確認はほぼないとのこと。一方で元管理職によれば、Amazonとしてはある程度「不当な」判断を機械がしてしまうのは想定内。というのも配達員を簡単に見つけることができる限り、誤った解雇を調査するために人を雇うよりもアルゴリズムを信頼する方が安上がりだと判断しているため。
この問題はAIの問題というよりギグワークの問題というべきかと思いますが、AIは「AIがこう判断したので…」と感情の矛先を人から逸らす役割で使われることもあり、その使い方は悪いことばかりでもないのですが、本件ではAIの存在をうまく使って批判を回避している向きもあるように思います。今後もAIの利用姿勢は各所で問われてきそうです。
写真を「アニメの背景」に変換するAI 30秒で“水彩風”など4種類の背景を生成
白黒写真しかなかった時代の写真をカラー化するニュースは、皆さんも見たことがあるのではないでしょうか。所謂「画風」を変換する技術をpix2pixと言いますが、かなり汎用的に利用できる技術なのでここでも取り上げます。こちらは、写真をアップロードするとアニメ風に画風を変換してくれるサービス。これでクリエイターの皆さんの激務が少しでも穏やかになることを願います。
MoT、AIドラレコサービスに脇見警報機能追加 アップデートで利用可能
Mobility Technologies(MoT)はJapanTaxiなどの配車アプリを作られていて、機械学習を用いたタクシーの到達時間予測AIが搭載されていることなども知られていますが、AIドラレコサービスでも多くのAIが搭載されており、その機能がアップデートされたというニュース。
車間距離不足や急加速・急減速などを検知する機能も配備していますが、危険シーンの検知というのは概して精度とともに検知速度も重要であり、トレードオフとなる2つの課題を解くという非常に難しいお題に挑まれており、技術的にも注目の企業です。
Technology
Generally capable agents emerge from open-ended play
AIを育てるバーチャル空間の話。「かくれんぼ」や「旗取りゲーム」など多数のゲームに挑戦できるバーチャル空間を用意し、最終的にはより一般的なタスクに対応できるエージェントAIを作ることを目的としている。もちろん本当の意味で汎用的なAIを作る道のりは遠いですが、このようにバーチャル空間を作りそこで学習させることでリアル空間では難しい多数の試行を行う、という発想は用途が広そうです。
Editor Picks
機械学習 アルゴリズム 、米 FTC が規制強化に乗り出す:「不正収集したデータに基づくアルゴリズムも不正だ」
米連邦取引委員会(FTC)が、ユーザーの同意を得ずに顔認証を行っていたサービスに対し、同意を得ていないデータを削除することに加え、それらのデータを使って開発したモデル・アルゴリズムの破棄も求めた、というニュース。
ユーザーの同意を得た上でデータを収集するのは当然ですが、例えば退会したユーザーのデータをもしAIの学習に使っていれば、データを取り除いて再度学習するという運用が必要となり、今後のAIの運用プロセスに影響を及ぼす動きとしても捉えたいところです。