Nishika AI News Letter - Issue #28
Summary
市場に大きく浸透しているAIサービスは市場操作すらできてしまうのでは?という視点は面白いです。グローバル化は文化の均質化を招いたと聞きますが、AI化も考え方の均質化を招いているのかもしれません。
AIがブーム化して数年が立ち、過去の予測がどうだったのか振り返る時期も来ています。テックジャイアントがAIイノベーションを独占するという予測は外れたとか、「AIが人間の仕事を奪う」は全く外れてはいないが意外な職種で起こっているなど。みなさんの予想は当たっていましたか?(M)
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Application
Rent Going Up? One Company’s Algorithm Could Be Why.
広く利用される住宅価格予測サービスが市場価格よりも高い価格を提示することで、家賃の上昇を助長しているのではないか?という指摘。事実は別として、AIによる市場操作の可能性に気付かされる。
ちなみに日本でもSUUMOのデータをスクレイピングして住宅価格予測を試し、予測が外れている物件についてなぜ外れているのかコミカルに解説した取り組みもあり(こちら)。SUUMOの浸透度を考えるとかなり市場価格を左右できそう。
“Google翻訳超え”の評判も。AI翻訳「DeepL」CEOが語る「セキュリティと守秘」「ユーザー数」
既にビジネスパーソンの常用ツールとなりつつあるDeepL。「日本語で書いたものをDeepLで英語にし、さらにその英語をDeepLで日本語へと翻訳することで、難しくて通じづらい言い回しを改善したり、英語での表現方法を学習している」とあるが、これのアナロジーで、超高精度文字起こしAIであるOpenAI Whisperに自分の日本語英語を認識させ、Whisperが認識できなかったところは自分の発音を矯正する必要があると学ぶ使い方もできたりする。AIを教材として使える段階に来ている。
住友ゴムとNECがタイヤ開発における匠のノウハウのAI化、思考の見える化で協業
タイヤ開発における匠(熟練設計者)のノウハウのAI化。目標台上特性値AIによって示された台上特性値を達成できる仕様をAIが提示する「最適仕様提示AI」では、マテリアルズインフォマティクスの考え方を応用し、過去の開発記録から設計仕様と台上特性値の関係を機械学習させ、そこで得た式を用いて目標台上特性値AIが導き出した目標台上特性値(改良案)を達成できる設計仕様を逆解析によって求めるアプローチを採用。
機械学習を使ったユースケースを考えるとき、A-Bのペアの学習データがある場合A→Bの予測だけでなくB→Aの予測もできることは、当たり前ながら頭に置いておきたい。
AI画像生成サービスMidjourneyの新機能“Remix”の破壊力がすごい
画像生成サービスMidjourney v4で追加された新機能“Remix”。画像2つを合体させて新しい画像1つを生成する機能。「ネコ」+「パン」でネコっぽいパンとパンっぽいネコができる。ビジネスユースにはやはり少し遠いか。
Technology
ディープフェイク音声を見破る驚きの手法、「恐竜の鳴き声」の応用で精度99.9%
恐竜の鳴き声は化石などを基に恐竜の声帯(音の発生器)や声道(声帯から口や鼻までの空洞)の形状を推測し、どのような鳴き声だったのかを推定する。
今回発表された手法では逆の手順を踏む。音声が発せられたときの声道の形状を計算し、計算結果が人間としてあり得ない形状だった場合、ディープフェイク音声だと判定する。
具体的な手法も公開されており、セキュリティと同様、守る→破る→守る・・・のサイクルが繰り返されるであろう領域ではあるが、非ディープラーニングの手法を持ち込んだのが面白い。
Editor Picks
5年目となるState of AI Report 2022が公開。AI投資家が過去の予測の振り返りをしつつ将来を予測するもの。例えばテックジャイアントがAIイノベーションを独占するという予測は、Stability AIなどが登場し予測通りではなかった、と振り返り。
Growth trends for selected occupations considered at risk from automation
「AIが人間の仕事を奪う」が定量的に事実だったのかを調査した米国政府の報告書。08-18の10年間で、例えば通訳・翻訳者の雇用は約50%増。一方でテレマーケターは迷惑電話の取り締まりにより約50%減。結論、当初の想定とは異なるが確実に人間が担う仕事は変遷している模様。