Nishika AI News Letter - Issue #11
Summary
ウクライナ関連のニュースが残念ながら目が離せない昨今ですね。文明が発展しようと変わらない人の所業を見せつけられやるせない思いになる一方、SNSを経由して現地の情報が驚くほど伝わってきて、その中で真偽不明な情報も多く出回っている状況はまさに現代という感覚にもなります。
AI、というか情報技術という意味では、今回の出来事の中では、精巧な偽動画やハッキングの応酬など高い技術が垣間見られます。どんな技術も使う人間次第という原則を肝に銘じて、技術も人間性も常にupdateしていきたいところです。(M)
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Application
QAnonを先導する謎の人物「Q」が言語学者による調査で特定された可能性
「QAnon」という米国の陰謀論の中心にいる匿名の人物「Q」が誰なのか、機械学習技術を用いて特定したというニュース。
Qの投稿の特徴をテキストをベクトル化し、3年間のうち2017年10月28日から2017年12月1日までとそれ以降の表現が異なるクラスターを形成したことから、各々書いている人物が異なると判断。
さらに、QAnonに関連する13人のソーシャルメディア、メッセージボードへの投稿、ブログ、出版された記事など、オンライン上の公開文章を収集して分析。先のQの投稿との類似性から、どの人物がQとして投稿を行なっていたのか特定。尚、特定された本人はQであることを否定している。
ほんの一端ではあるが、匿名であっても表現のみから個人が特定できる可能性を示したという意味で良くも悪くも注目したいニュース。
Outracing champion Gran Turismo drivers with deep reinforcement learning
レースゲームのグランツーリスモにて、深層強化学習をおこなったソニーのAIドライバー"GTソフィー"が人間のレーサーに勝利。
「初期は後ろから衝突することがあったが、ルールを守りつつ効率的に成果を上げるために、AI開発者は報酬の与え方を微調整し、GTソフィーにルールの遵守を学習させた」とも報告されており、単に勝負に勝つだけでなくその勝ち方も報酬の制御を通じて変えることができた点に注目です。
This AI Could Be Robocallers’ Kryptonite
ロボットがかける迷惑電話(ロボコール)を排除するAI。
RobocallGuardは、まず発信者番号がブラックリストに載っている場合にブロックし、そうでない場合は、発信者に用件を尋ね、キーワードを認識するニューラルネットワークを使って返答を聞く。発信者がユーザーの名前を言った場合、GoogleのSpeech-to-Text APIを使って生成した対話の記録とともに通話を転送する。
TouchPalは、かかってきた電話を嫌がらせ、詐欺、配送、販売、その他のカテゴリーとしてユーザーがラベル付けできるようにしてデータセットを収集。このラベルと、連絡先、匿名化された電話番号、通話時間、通話時間などの情報を使って、バニラニューラルネットワークを学習させ、電話に出る前に迷惑電話を分類する。
米国では2021年には約40億件の迷惑電話がかけられていたそうで、機械学習によるロボコールの排除のニーズは高い。
一方で、特定のキーワードに反応する人間の声を録音し、その音声を再生することで、あたかも人間が話しているかのように装う手口もあり、ロボコール側の精度も高まっている。
Apple Buys Startup That Makes Music With Artificial Intelligence
Appleは、既存の録音から新しい音楽を生成するソフトウェアを持つロンドンのスタートアップ、AI Musicを買収した。
AI Musicは、ユーザーの聴取嗜好に関するデータを分析し、それに応じて広告のBGMをスタイルを変えるなどして調整するプラットフォームを開発している。また、ソーシャルネットワークのHornetと提携し、動画の内容、既存のサウンドトラック、ユーザーの好みのスタイルに基づいて、ユーザーの動画にカスタムサウンドトラックを生成することもできる。「Ossia」というアプリでは、ある曲のボーカルと別の曲の楽器をミックスすることができ、さまざまな雰囲気やスタイルのリミックスをあらかじめ生成して提供している。
日本でも直近、小室哲哉さんがAIによる作曲の研究に参画したというニュースがありました。 まだ、AIがオリジナルの素晴らしい音楽を生成するという段階には達していませんが、活発なR&Dが行われている状況にあります。
Editor Picks
LinkedIn Jobs on the Rise 2022: The 25 U.S. roles that are growing in demand
LinkedInの分析によると、機械学習エンジニアの求人ボリュームは急成長中。
LinkedInの年次レポート「Jobs on the Rise」によると、機械学習エンジニアは、米国で急成長している25の職種の中で4位にランクインした。(上位3位は、ワクチンスペシャリスト、ダイバーシティ&インクルージョンマネージャー、カスタマーマーケティングマネージャー)。
機械学習エンジニアの給与は72,600ドルから170,000ドルの範囲。中央値で4年の経験が求められ、深層学習、自然言語処理、TensorFlowなどのスキルを要求されることが多かった。
以上のLinkedInの分析は米国に限るが、世界的に機械学習の仕事は増加傾向にある。
例えば、コールセンターの仕事がオートメーションに取って代わられつつあるフィリピンでは、アウトソーシング業界が機械学習やデータ分析の専門家を育成するための大規模な取り組みを開始している。
さらに、MIT Technology Reviewの調査によると、アジアの経営者の96%、アフリカと中東の経営者の82%が、2019年の時点で自社が少なくとも1つの機械学習アルゴリズムを導入していると回答している。
シンクタンクのブルッキングス研究所は、50カ国のうち、どの国がAI大国と言えるかを評価した。評価は、総処理能力、トップクラスのスーパーコンピューターの数、AIへの民間・公共投資、研究発表や特許出願の量など、10の指標に基づいている。
評価の結果、まず米国と中国が明らかなトップ。米国は技術に優れるが、中国は人口がはるかに多いため、エンジニアリングと研究の分野で将来的に利益を上げることが期待されている。
フランス、ドイツ、日本、英国は次のグループにランク。さらに、カナダ、インド、イタリア、韓国を次のグループとした。このうち、インドは教育は優れているが、技術が不足しているとされている。
残りの国々は、投資、技術、あるいはその両方が不足している。このグループには、オーストリアやシンガポールなど比較的豊かな国や、メキシコやウガンダなど歴史的に発展途上にある国も含まれている。